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北京パラリンピックへの道1~パラスノーボード ワールドチャンピオン 小栗大地選手・岡本圭司選手~

「早く自宅に帰って3人の子ども達と遊んだり、ゆっくりしたい。」

「今やりたいことは?」という質問に答えてくださったのは

イタリア遠征から帰国後に直行で、都内のホテルに3日間「バブル」中の小栗選手。

「ホテルの部屋が狭くて体が動かせず、部屋の外に監視員がいて、

一歩も出られず結構きつい」という岡本選手は

帰宅したら「奥さんの手作りの餃子が食べたい」そう。

オンラインで、小栗選手と岡本選手にインタビューさせていただいた。

 

2020-2021シーズン パラスノーボード ワールドチャンピオン

フィンランド・ピュハ大会でワールドカップ初優勝、

イタリア・コーレレ大会 5位という好成績で

小栗大地選手(40 三進化学工業株式会社 右大腿義足)は

今季パラスノーボードクロスLL1クラス(重い下肢障害)の

ワールドチャンピオンに輝いた。

「優勝できたのはフルメンバーではなかったから」と謙虚に話す。

フィンランドには表彰台常連のアメリカ勢

Elliott, Noah、Burdick, Tyler)が参加していなかった。

アメリカが参加したコーレレ大会は5位。

「ようやくアメリカ人選手の背中に追いついてきた。

平昌パラリンピック(2016 7位)から順調にレベルアップしていて

このペースだと追いつける」と手ごたえを感じている。

 

LL2クラス(下肢障害)のワールドチャンピオンは、ピュハ大会4位、

コーレレ大会 初日6位・2日目準優勝だった

岡本圭司選手(39 サイドウェイ株式会社 右脚麻痺)。

「今季は去年より早くなった感覚がある。

全てのレースでベストの滑りができているので

自分の実力通りか実力以上の結果が出ていると思う。

健常者の時に10年ほどレースをやっていて

メンタリティの持ち方は長けている方なので、

スタート前に緊張してミスするということはあまりない。

(もともとはフリースタイル・スノーボードをやっていたので)

クロスの経験が未熟で勝ち方がわかっていないが

そこに合わせた調整の仕方は、今までの経験で、実力通りの力が出せていると思う。」

 

同じLL2クラスにいる市川貴仁選手は、全体的に上手い。

田淵伸司選手はターンが得意。スタートセクションが得意な岡本選手と

得意なところが3人で異なる。

選手たちはこの数年、互いにテクニックを盗み合い

切磋琢磨しながら、実力が並んできた。

 

チームビルディング

コーチ陣はパラスノーボードチームを「今回は本物の『チーム』が作れたのではないか」

と感じている。世界と勝負ができるようになった練習環境を作ってくれているコーチ陣を

「こんなに理解力があるチームは初めて」というほど、岡本選手は信頼している。

 

コーレレ大会の初日、岡本選手は仕事のため前日に会場入りし、6位という結果だった。

そこで映像研究班が、早い選手との比較動画を作成するなど協力。

コーチ・キャプテンらも集まって夜遅くまで分析やアドバイスをもらい

どこでスピードロスがあるかが明確になった。

次の日の予選で、岡本選手はタイムが2秒縮まり、その勢いで準優勝。

「自分で勝ち取ったというより、皆に立たせてもらった表彰台」だと感謝している。

 

特に「キャプテンがすごい。男として心が広い」と岡本選手は小栗選手を絶賛する。

小栗選手は最年長としてスノーボードチームのキャプテンを務めている。

イタリア大会では、小栗選手が5位決定戦のスタート台から

「初めての表彰台の瞬間はカメラ構えているから気合入れて行けよ」

と岡本選手に向けて叫んだ。

「自分のスタート前に、他人を気遣う余裕があるのはすごい。

自分の勝ち負けも大事だが、仲間のことを考える心を教わっている」

と岡本選手は感謝する。

 

コロナ禍の過ごし方

小栗選手はジムが休館だった昨年4月頃

子どもと一緒に公園でスケートボードをしていたという。

夏に海外へ行けなかったので、日本がシーズンインするまで

今季は雪の上で滑ることができなかった。

栂池と鹿島槍での合宿と2度の海外遠征があり、遠征後は2週間の隔離があるため

他に個人的に1週間くらい滑れただけだった。

それでも「来シーズンに向けて、大きく飛躍できたシーズンだった」と振り返る。

 

来年の北京パラリンピックに向けて

「あと1年を切っているので、オフにしっかりトレーニングして

レベルアップして北京で勝てるようにしたい」と小栗選手は意気込みを語った。

小栗選手は平昌パラリンピックはレギュラースタンス(左脚前)だったが

現在はグーフィー(義足の右脚が前)で練習している。

大腿義足なので、滑走は義足の影響が大きい。

「(現在持っている3つの義足の)ソケットをシーズンオフに作るつもりだ。

パーツやセッティングを調整しながら、遠征先のコースでの練習で実際に試して

大会に臨みたい。」

 

岡本選手は「出来ることをあまり気負わずにやっていきたいと思っている。

同じクラスの仲間たち3人全員で北京パラリンピックに出場したい。」

 

ソチ(2014)で1個・平昌パラリンピックで2個の金メダルを獲った

女子パラスノーボーダーのビビアン・メンテル(オランダ)が

脳腫瘍のため3月29日に48歳で亡くなった。イタリアの大会では追悼イベントも行われた。

「物ではなく思い出を集めなさい」と言う彼女の言葉から

北京パラリンピックは「皆でやりきったという最高の思い出を作りたい」

と岡本選手は願っている。

(文・動画編集 石野恵子)